「自分ももしかして?」
研修で気づく“ハラスメントの境界線”とは

In ブログ by actrate_sample

こんにちは。
さくら人材コンサルティング株式会社の伊藤明美です。

企業で研修をしていると、
受講者の方からこんな声を耳にすることがあります。

「今日の研修で、初めて“自分がされてきたこと”が
ハラスメントに該当するかもしれないと分かりました」

「知らないうちに、自分も同じ行動を部下にしていたかもしれない」

実は、これは決して珍しいことではありません。

むしろ、ハラスメント研修の現場では“あるある”なのです。

今回は、ハラスメント研修をしているからこそ見えてくる
「気づきの瞬間」と「境界線の曖昧さ」について、お伝えします。

■「自分も受けていた」と気づく瞬間

研修の中で、ある受講者が
こんなエピソードを話してくれました。

「自分が熱を出しても、上司から“休むな”“帰れない”
と言われて働いてきた。

だから、部下が体調不良で早退したいと言っても、
つい“もう少し頑張ろうか”と声をかけていた」

この方は悪意があったわけではありません。

むしろ、「自分も乗り越えてきた」という
誇りすらあったと思います。

しかし、研修を通じて初めてこう語りました。

「それがパワハラにあたる可能性があるなんて、
今日まで本当に知りませんでした」

この「知らなかった」という感想は、
研修の現場で非常に多く聞く言葉です。

■昔の当たり前が、いまは通用しない時代

「自分の時代はもっと厳しかった」
「根性で乗り切るのが当たり前だった」

こうした価値観は、多くの昭和・平成世代の中に根付いています。

心理学的には、これは

「同化(identification)」

という現象に近いと言われています。

人は、過去に自分が受けた扱いを
“当たり前”として刷り込まれ、
それを次の世代に引き継いでしまうのです。

悪気があるわけではありません。

むしろ「正しい」「必要」「鍛えるため」
と思って行っているケースがほとんど。

しかし、ここに大きな落とし穴があります。

■「努力」「根性」の押しつけはハラスメントにつながる

例えば次のような言葉。

・「私の頃はもっと厳しかった」
・「この程度で弱音を吐くな」
・「社会に出たらもっと辛いぞ」

これらは“励まし”のつもりで言っている方が多いのですが、
受け手にとってはこう感じることがあります。

・自分の辛さを否定された
・苦しんでいるのに理解してもらえない
・相談することが悪いことのように感じる

結果として

「尊厳を傷つけられる」
「心理的安全性が損なわれる」

などの理由から、パワーハラスメントに分類されることがあります。

特に疲労や体調不良の場面では顕著で、
「もう少し頑張れ」という言葉が命に関わることもあるため、
いまは国も企業も非常に敏感になっています。

■加害者にも被害者にも“自覚がない”ことが多い

ハラスメントの特徴のひとつが
加害者にも被害者にも「自覚がない」ことが多い
という点です。

▼加害者の典型的なケース

・良かれと思って言った
・昔から普通に行われていた
・悪意ではなく気遣いのつもり
・部下の成長のためと思っていた

▼被害者の典型的なケース

・自分が弱いだけだと思っていた
・みんな耐えていたから仕方ない
・上司だから従うしかないと思っていた
・相談しても無駄だと感じていた

このように両者の認識にズレがあるため、
研修や対話を通じて“言語化”できる機会が
とても重要になります。

■研修の目的は「責めること」ではなく「気づくこと」

私は研修の中で必ずこうお伝えしています。

「ハラスメント研修は、誰かを責めるための研修ではありません。」

目的はただひとつ。
不必要な苦しみをなくすこと。
そして、安心して働ける職場をつくること。

そのためには、

「自分は大丈夫だろう」
「自分は加害者ではない」

ではなく、

“自分も例外ではない”と捉える姿勢が大切です。

実際、「自分もハラスメントをしていたかもしれない」
と気づいた管理職の方ほど、研修後に行動が早いです。

■境界線が曖昧だからこそ、知識が必要

ハラスメントは

「白か黒か」

で判断できません。

むしろ、職場で起きている多くの問題は
“グレーゾーン”です。

・相手の受け取り方
・状況
・頻度
・関係性
・業務上の必要性
・指導の仕方

これらの要素が複雑に絡み合うため、
同じ行動でも「ハラスメントになる場合」と
「ならない場合」が存在します。

だからこそ、
“何がOKで、何がNGなのか”を知る
ことが本当に大切なのです。

■ハラスメントは「無自覚の継承」で増えていく

心理学では、教育や文化は“継承”されると言われています。

・怒鳴られて育った人は怒鳴る指導をしてしまう
・我慢してきた人は我慢を求めてしまう
・苦しい環境で育った人はそれを普通と感じてしまう

これは家庭にも、会社にも当てはまります。

しかし、
継承は気づいた瞬間に断ち切ることができます。

研修を通して多くの受講者が

「自分は同じことを繰り返していたかもしれない」

と気づくことで、負の連鎖は止まり始めます。

■“気づくこと”こそ最大の予防策

ハラスメントの専門家として多くの企業を見てきた中で、
本当に強く感じることがあります。

ハラスメントの予防は、「知識を持つこと」から始まる。

“自分は被害者だったかもしれない”
“自分も加害者になっていたかもしれない”

この両方に気づくことができれば、人の扱い方が変わります。

・言葉の選び方
・伝え方
・感情の扱い方
・相手の状況の理解
・業務上の指導と人格否定の線引き

これらが格段に丁寧になります。

■「気づいた」人から職場は変わっていく

ハラスメント対策は、企業の“風土改革”です。
一度の研修だけで終わるものではありません。

しかし、研修をきっかけに
たった一人でも気づく人が増えれば、必ず職場は変わり始めます。

・部下の体調を気にかける上司が増える
・「大丈夫?」と声をかける文化が育つ
・相談しやすい雰囲気ができる
・“怒鳴らない指導”が広がる
・ミスを報告しやすくなる
・対話が増える

心理的安全性は、こうした小さな積み重ねから育っていきます。

■無意識の“善意”が相手を追い込むこともある

特にハラスメントの現場で多いのが
“善意の押しつけ”です。

・「あなたのためを思って」
・「成長してほしいから」
・「期待しているからこそ厳しくしている」

こうした言葉は、裏を返せば

“相手の気持ちを見ていない”
“相手の限界を無視している”

という意味になってしまうこともあります。

アドラー心理学でも
他者の課題に土足で踏み込まない

という考え方が重要視されています。

「相手のため」という理由であっても、
結果として相手が傷ついているなら、それは問題です。

■境界線が曖昧でも「気づき」が職場を変える

ハラスメントは

“こうすれば絶対に大丈夫”

という正解があるものではありません。

関係性も文化も、職場ごとに違うからです。

しかし、ひとつだけ確かなことがあります。
ハラスメントは「気づく」ことでしか防げない。

・自分が受けてきた当たり前
・無意識に使っている言葉
・ストレスが溜まった時の行動
・昔の価値観
・良かれと思った行動

これらを一度立ち止まって見つめ直すことが、
もっとも大きな効果を生む予防策となります。

■最後に:あなたの気づきが、誰かを救う

ハラスメントは、決して他人事ではありません。
誰もが加害者にも、被害者にもなり得ます。

ですが、気づいた人から変わっていくことができます。
研修はそのための大切な第一歩です。

もしこの記事を読んで

「自分も無意識にやっていたかもしれない」
「昔の体験が実は辛かったのかもしれない」

と感じた方がいたら、それはとても大事な“気づき”です。

その気づきは、必ず周囲の人を守ります。
そして、職場の未来を変える力になります。

これからも、ハラスメントのない働きやすい環境づくりを
一緒に進めていきましょう。

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