カスタマー・ハラスメントのターゲットになりやすいのは?
心理学から読み解く「狙われやすい人」と組織が取るべき対策

In ブログ by actrate_sample

こんにちは。
さくら人材コンサルティング株式会社の伊藤明美です。

最近、企業のご担当者や現場責任者の方から、
こんなお悩みを伺うことが増えてきました。

「カスハラが全体的に発生しているわけではなく、
特定のスタッフばかりが狙われる」
「顧客トラブルの報告は同じメンバーに集中していて心配」
「本人の性格やスキルの問題ではなく、構造的な要因もあるのでは?」

実際に、カスタマー・ハラスメント(以下カスハラ)には
「ターゲットにされやすい人の傾向」 が存在します。

もちろん、本人が悪いわけではありません。

むしろ、その人の長所(優しさ、真面目さ、丁寧さ)が、
悪質な顧客に悪用されてしまう――

そんなケースが非常に多いのです。

本記事では、以下のポイントを深掘りしながら
丁寧に解説していきます。

  • どんな人がカスハラのターゲットにされやすいのか
  • その背景にはどんな心理メカニズムがあるのか
  • 企業や管理職ができる具体的な対策は?
  • 実際の相談事例から見える “構造的な弱点”
  • 心理学を活かした「反撃ではなく、防御するためのスキル」
  • 今、組織に求められる「安全配慮義務」の視点とは

カスハラは、現場の誰か一人の問題ではなく
組織全体で向き合うべき課題 です。

ぜひこの記事を、自社の体制づくりの
ヒントにしていただけたらと思います。

1. 女性スタッフだけの職場は「狙われやすい環境」になりやすい

多くの現場で見られるのが、
「女性ばかりの職場で、男性顧客からの理不尽な要求が増える」
というパターンです。

例えば

  • 金融機関の窓口
  • ドラッグストア
  • アパレル
  • コールセンター
  • 行政窓口

などでは、女性比率が高いことが多く、
そこで理不尽な要求をしてくる特定顧客が一定数存在します。

■なぜ「女性だけ」がターゲットになりやすいのか?

背景には、次のような心理があります。

① “舐めても大丈夫” というジェンダーバイアス

悪質クレーマーは、相手を「上下」で判断します。
その際、性別による偏見(ジェンダーバイアス)が
影響しやすいと言われています。

  • 女性は弱い
  • 断ってこない
  • 優しく対応するはずだ
  • 怒鳴れば従うはず

こうした「思い込み」が攻撃のスイッチになってしまうのです。

② “自分の力を誇示したい” という支配欲求

特に中高年の男性に一定数みられる心理として

「自分の力を試したい」
「支配できる相手を探している」

という行動があります。

家庭や職場でストレスを抱えている人ほど、
弱い立場の人に攻撃を向けやすいと言われています。

これは心理学でいう 攻撃の置き換えの典型です。

2. おとなしい・断れないタイプの人は「言いやすい相手」にされる

次に多いのが、このパターンです。
「性格的におとなしい人」「断るのが苦手な人」が狙われる。

本人はとても優しく、丁寧に仕事をしているのに、
悪質顧客にとっては「攻撃しても大丈夫そうな相手」
に見えるのです。

■クレーマーの心理: “抵抗しない相手を選ぶ”

悪質クレーマーは 「勝てる相手」 を選びます。

  • 言い返してこなそう
  • 謝ってくれそう
  • 困っても顔に出さなそう
  • 優しいから押せばいけるだろう

こうした相手には、要求がどんどんエスカレートします。

●「沈黙」は“了承”と解釈されてしまう

本人は

「強く言い返したくない」
「職場に迷惑を掛けたくない」
「まずは謝って収めたい」

と思っていても、悪質客からは
“この人には強く出ていいんだ” と誤ったメッセージとして
受け取られてしまいます。

これは決して本人が悪いわけではありません。
むしろ「優しい」「真面目」「丁寧」という
長所が裏目に出た結果です。

3. ワンオペでの接客は「物理的弱さ」が狙われやすさを生む

最近相談が増えているのが、
スーパー・飲食店・ドラッグストアなどでの
ワンオペ対応時のカスハラ です。

  • 夕方の混雑時に店員が1人
  • レジも品出しもフロアも全部担当
  • 問い合わせもクレームも全部1人で対応

この状況は、悪質クレーマーにとって
絶好のタイミングとなってしまいます。

■「逃げられない状況」が相手の支配欲を刺激する

① 「この人しかいない」と思わせてしまう

悪質顧客は

「今日は店長いないの?」
「他に誰もいないなら君が責任者だろう」
「誰にも相談できないだろう?」

と、相手の孤立を利用しようとします。

② 物理的に助けを呼べない → 精神的にも追い詰められる

ワンオペ環境は

・他のスタッフにバトンタッチできない
・管理職にも連絡しづらい
・クレームの長時間化
・周りのお客さんが見ているプレッシャー

などが重なり、精神的負担がとても大きくなります。

4. カスハラ加害者に共通する心理
― “上下意識” と “攻撃の置き換え”

ターゲットにされる人の特徴の裏には、
加害者の心理メカニズム が常に存在します。

① 無意識下の上下意識(店員=下、客=上)

一部の顧客は、サービス業に対して
次のような上下関係を持っています。

  • 金を払っているのだから言うことを聞け
  • 店員は客より立場が下だ
  • 多少強く言うぐらい当たり前

これは「サービスを受ける側は上位」
という間違った認識です。

本来、企業と顧客は 対等な関係
であるにもかかわらず、
文化的背景・世代的背景から、
「客は絶対」という価値観が残っている人もいます。

② 攻撃の置き換え

日常生活でストレスを抱える人ほど、
その怒りを職場の店員に向けやすいと言われています。

  • 職場で叱られた
  • 家庭で居場所がない
  • 誰にも話を聞いてもらえない
  • 自分を認めてほしい
  • コントロールしたい

こうした感情が、抵抗しなさそうな店員に向けられるのです。

5.「ターゲットになりやすい人」を責めてはいけない理由

多くの企業で起こりがちなのが

「また〇〇さんがクレームを持ってきたの?」
「もっと強く言わないと」
「対応の仕方が悪かったんじゃない?」

という、被害者非難(Victim Blaming) です。
しかし、これは絶対にやってはいけません。

■本人の人格・スキルのせいではない

ターゲットになりやすい人には、
「弱さ」ではなく、むしろ「長所」があります。

  • 真面目
  • 誠実
  • 優しい
  • 丁寧
  • 責任感がある
  • 顧客の話をよく聞く
  • 相手を立てる

これらは本来、接客業において非常に価値の高い能力です。
悪質クレーマーが、それを悪用しているだけなのです。

6.企業が取るべき3つの具体的対策

ターゲットが生まれてしまう背景には、
「個人」ではなく 組織の構造的な問題が
潜んでいることが多いです。

ここでは、企業が取り組むべき3つの柱をご紹介します。

1. 一人にさせない仕組みをつくる

●複数人対応(ツーマン接客)

クレーム対応の際は、1人ではなく
“複数人で対応する” ことで、
悪質客の攻撃を軽減できます。

  • 後ろに立つサポートスタッフ
  • 責任者の同席
  • リーダーが引き継ぐ体制

複数人がいるだけで、
暴言や威圧的な態度は明らかに減ります。

●呼び出しボタンや支援ツールの設置

レジやフロアに「SOSボタン」や
「ヘルプコール」を設置し、

スタッフが困ったときにすぐに応援を呼べる環境を
整える企業も増えています。

2. 断る力を育てる研修を実施する

●「毅然とした対応」のスキルは訓練できる

  • 適切な言葉選び
  • 揺さぶりへの対処
  • 境界線(バウンダリー)の引き方
  • 理不尽な要求の線引き
  • 怒っている相手への心理的距離の保ち方

これらは、研修とロールプレイで確実に身につきます。
特に有効なのは、心理学を応用した

  • 感情の切り離し
  • 客観視(メタ認知)
  • アサーティブコミュニケーション(DESC法)

悪質クレーマーの言葉の “罠” に巻き込まれず、
冷静に対応できるようになります。

3.被害者を責めない文化をつくる

●「報告しやすい」だけで環境は劇的に変わる

  • 些細なことでも相談してOK
  • 失敗を責めない
  • クレームは“個人のせい”ではなく“組織として扱う”

この文化があるだけで、カスハラ件数は大幅に減ります。

●管理職は「味方になる」姿勢を明確に示す

  • 一緒に対応する
  • 心理的ケアを行う
  • 人事部と連携する
  • 担当者の配置転換も柔軟に行う

スタッフを守れない企業は、いずれ人が辞め、
採用・教育コストが膨れ上がります。

7.実際にあった相談事例(匿名加工)

ここからは、私が実際にいただいた企業相談の一部を、
匿名でご紹介します。

■事例1:若い女性スタッフだけの店舗で、常連男性が暴言

20〜30代の女性スタッフが中心の店舗。
ある常連男性が、来店のたびに特定スタッフにだけ
怒鳴る・過剰要求をするという事例でした。

対策として、

  • ツーマン対応
  • 店長が前に立つ
  • 入店時に別スタッフが声をかける
  • 記録を取り会社として警告文を送付

を行ったところ、攻撃行動が激減しました。

■事例2:真面目で優しい若手女性が標的に

本人はとても誠実で、対応も丁寧。
しかし、常連客の「もっとこうして」「前はやってくれた」
という要求がエスカレート。

面談で話を聞くと、

「断って怒られたらどうしようと思ってしまう」
「迷惑をかけたくない」

という気持ちが強いとのこと。

企業側がサポートに入り、
面倒な顧客対応は管理職が同席する形に変更。

本人は大きく安心し、離職を防ぐことができました。

■事例3:ワンオペ店舗でのカスハラ増加

食品スーパーの夜間帯で、スタッフは1人のみ。
この時間帯に悪質クレーマーが集中しました。

改善策として、

  • 夜間帯は2人体制へ移行
  • 緊急ボタン設置
  • クレーム対応マニュアルの刷新
  • 防犯業者と連携

その結果、スタッフの疲弊が減り、売上も改善しました。

8.心理学で読み解く「ターゲットにされやすい人」は何が起きているのか

カスハラの場合、「弱いから攻撃される」のではなく、
心理学的には次の力学が働いています。

① アサーティブではなく「自己卑下」に見られてしまう

本人は丁寧に接しているだけでも、

  • 必要以上に謝る
  • 相手に合わせすぎる
  • 曖昧な表現が多い

と、攻撃的な顧客からは「支配しやすい存在」に
誤解されてしまうことがあります。

② 感情労働の負担が大きい

カスハラが多い職場は、
「感情労働」の負担が過大になります。

  • 笑顔で接する
  • 相手に合わせる
  • 嫌なことがあっても表に出さない

この負担が、ターゲットにされやすい人に偏ってしまうのです。

③ 「認知バイアス」を悪用される

悪質クレーマーは、心理的な隙をついてきます。

  • 断れない人には強気に出る
  • 責任感の強い人に押し付ける
  • 優しい人に甘える
  • 曖昧に答える人に要求を拡大する

これらは、加害者が無意識に行っている
「相手の特性スキャン」ともいえる行動です。

9.組織として「ターゲットを生まない」ためにできること

最後に、企業全体で行うべき総合対策をまとめます。

1)カスハラを“個人の問題”にしない

クレームは現場に任せず、
企業としての姿勢を明確に示すことが重要です。

2)必ず管理職・本部へ共有させる仕組みを作る

  • 報告しやすいフォーム
  • チャットツールでの報告
  • 匿名相談窓口
  • カスハラ記録シート

これらは防止効果が高く、裁判でも
企業の安全配慮義務を果たした証拠になります。

3)教育(研修)で「守られる力」を育てる

最新のカスハラ研修では、次のような内容が
多く取り入れられています。

  • 心理的距離をおく技術
  • 相手の怒りに飲み込まれない方法
  • アサーティブスキル
  • 境界線の引き方
  • 悪質クレーマーとの会話パターン

知識があるだけで、対応力も安心感も大きく変わります。

10.まとめ:ターゲットにされる原因は「個人」ではなく「構造」

カスハラは、個人が悪いわけではありません。
ターゲットにされやすい人には共通点がありますが、
その多くは 長所の裏返し です。

  • 優しい
  • 真面目
  • 丁寧
  • 責任感がある
  • 控えめ
  • 話をよく聞く

これらは本来、接客のプロに必要な大切な素質です。
悪質顧客が、その長所を悪用しているだけなのです。
だからこそ、企業の役割は明確です。

「おとなしい人だから」
「女性だから」
「一人だったから」

と自己責任にしないこと。
組織として、守る仕組み・育てる仕組みをつくること。

それこそが、スタッフの離職防止にもつながり、
安心して働ける職場づくりの第一歩になります。

スタッフが安心して働ける環境づくりのサポートが必要な企業さまは、
ぜひ当社までお気軽にご相談ください。

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