実は多い「上司からのハラスメント相談」
― 相談窓口は部下のためだけではない―

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第1章:ハラスメント相談が増える職場、減る職場の決定的な差

企業でハラスメント研修を行っていると、よくこのような質問をいただきます。
「最近、ハラスメント相談が増えているのですが、
これは職場が悪化しているのでしょうか?」

人事担当者や管理職の方にとって、相談件数の増加は気になるものです。
場合によっては「うちの会社はハラスメントが多いのではないか」と
不安に感じることもあるでしょう。

しかし、実務の現場で多くの企業を見ていると、
必ずしもそうとは限らないと感じます。

むしろ逆のケースも少なくありません。
相談が増えている職場のほうが、実は健全な可能性がある。

これは少し意外に感じるかもしれません。
ハラスメントが少ない職場なら、相談も少ないはずだ。
そう考えるのは自然です。

しかし実際の職場では、次のような現象が起きています。

相談が多い職場
→ 早い段階で問題が表に出る

相談が少ない職場
→ 問題が表に出ないまま、深刻化する

つまり、相談件数だけを見て職場の状態を判断することはできないのです。
では、ハラスメント相談が増える職場と減る職場の間には、
どのような違いがあるのでしょうか。

その決定的な差は、実はとてもシンプルです。

「相談できる空気」があるかどうか。

これに尽きます。

相談できる職場では、ちょっとした違和感の段階で声が上がります。

「この言い方は少しきつかったかもしれない」
「指導の仕方をどうすればいいのか迷っている」
「部下との関係がうまくいっていない」

このような段階で相談が入るため、問題は大きくなりにくいのです。
一方、相談できない職場ではどうなるでしょうか。

小さな違和感は放置されます。
その結果、

・突然、労働局への申告
・突然の退職
・突然の訴訟

という形で問題が表面化することがあります。

企業としては「そんな問題があったとは知らなかった」と驚くことになります。
しかし、実際にはその前段階で、必ず何らかのサインが出ているものです。

では、相談できる職場はどのようにして作られるのでしょうか。

ここで重要になるのが、相談窓口の存在です。
ただし、ここで少し考えていただきたいことがあります。

ハラスメント相談窓口というと、どのようなイメージをお持ちでしょうか。
多くの方は、おそらく次のように考えているのではないでしょうか。

「被害者が相談する場所」

もちろん、それは間違いではありません。
しかし、現場を見ていると、もう一つ重要な役割があることに気づきます。

それは、

「困っている管理職が相談する場所」

という役割です。

実は、ハラスメント相談窓口には、部下だけでなく上司からの相談
少なくありません。

例えば、実際にあった相談の中にはこのようなものがあります。

・挨拶しても部下が返してくれない
・指示を出しても動かない
・陰で「パワハラ上司」と言われている

このような状況に置かれた管理職が、
「どう対応すればいいのか分からない」
と相談に来るケースは決して珍しくありません。

むしろ最近は、こうした相談は増えている印象すらあります。
なぜこのようなことが起きているのでしょうか。

背景には、現代の職場特有の難しさがあります。
ハラスメントへの社会的関心が高まる中で、
「強く言ったらパワハラになるのではないか」
と不安を感じる管理職は少なくありません。

その結果、

・指導を控える
・注意をしない
・関係を避ける

という行動が起きてしまうことがあります。

しかし、これは決して管理職の怠慢ではありません。
むしろ、多くの管理職は真面目に悩んでいます。

「どう伝えればいいのか分からない」

という悩みです。

だからこそ、ハラスメント相談窓口は被害者のためだけのものではないのです。
困っている管理職が、安心して相談できる場所でもあります。

そして実は、ここがハラスメント対策の大きな分かれ道になります。

相談できる管理職がいる職場は、問題が深刻化しにくい。
相談できない管理職がいる職場は、問題が爆発しやすい。

この違いは決して小さくありません。
では、企業はどのような相談体制を整えるべきなのでしょうか。

そして、なぜ多くの企業で相談窓口が機能しないのでしょうか。

次の章では、企業が誤解しやすい
「相談件数」の見方
について考えていきたいと思います。

 

第2章:「相談が多い=問題が多い職場」ではない

前章では、ハラスメント相談の件数だけで職場の良し悪しを
判断することはできない、というお話をしました。

むしろ、
相談が増えている職場のほうが、健全な可能性がある。
そうお伝えしました。

この話をすると、人事担当者や管理職の方の多くが、少し驚いた表情をされます。
企業の中では、どうしても次のような考え方が生まれやすいからです。

「相談件数が多い
=ハラスメントが多い会社」

しかし、実際の現場を見ていると、この図式は必ずしも当てはまりません。
むしろ、相談件数が少ない企業ほど、慎重に見なければならないケースもあります。

例えば、研修の場でよく聞くのがこのような言葉です。

「うちはハラスメント相談はほとんどありません」
一見すると、とても良い職場のように聞こえます。

しかし、少し掘り下げてみると、次のような状況が見えてくることがあります。

・相談窓口がどこにあるのか社員が知らない
・相談したら人事に知られてしまうのではないかという不安がある
・相談した人が職場で浮いてしまうのではないかという空気がある

つまり、
「問題がない」のではなく
「相談できない」
という状態です。

これは企業にとって、決して望ましい状況とは言えません。
なぜなら、ハラスメントの問題は、多くの場合いきなり大きなトラブルとして
表面化するわけではないからです。

最初はほんの小さな違和感から始まります。

「最近、言い方がきつい気がする」
「少し指導が厳しいかもしれない」
「チームの雰囲気が悪くなってきた」

こうした段階で誰かが相談できれば、問題は比較的小さなうちに
修正することができます。

例えば、

「伝え方を少し変えてみましょう」
「この場面ではこういう声かけの方が良いかもしれません」

といったアドバイスだけで、状況が改善することも珍しくありません。
しかし、相談できない職場ではどうなるでしょうか。

違和感は心の中に溜まり続けます。
そしてある日、突然こうした形で表面化します。

・労働局への申告
・弁護士への相談
・突然の退職

企業としては、
「そんな問題があったとは知らなかった」
という状況になってしまいます。

しかし、実際にはその前に、必ず何らかのサインが出ています。
相談が入らない職場では、そのサインが見えなくなってしまうのです。

ここで少し考えていただきたいことがあります。
もし、あなたの会社でハラスメント相談が増えてきたとしたら、
それは本当に「問題の増加」でしょうか。

もしかすると、
「相談できる空気ができてきた」
という変化かもしれません。

これは決して悪いことではありません。
むしろ、組織としては前進している可能性があります。

相談ができるということは、
「会社は聞いてくれる」
という信頼が生まれているということでもあるからです。

ハラスメント対策というと、「問題をなくすこと」に
意識が向きがちです。

もちろん、それは重要です。
しかし現実の職場では、意図せず誤解が生まれることもありますし、
コミュニケーションの行き違いも起こります。

だからこそ重要なのは、

問題をゼロにすることより
問題を早く見つけること

です。

その意味で、相談窓口の存在はとても重要です。
そしてここで、もう一つ大切な視点があります。

それは、
相談するのは部下だけではない
ということです。

多くの企業では、ハラスメント相談窓口を
「被害者が相談する場所」
として設置しています。

しかし、実際の現場では、もう一つの相談が増えています。

それが、
上司からの相談
です。

「部下との関係に悩んでいる」
「どう指導すればいいのか分からない」
「パワハラと言われないか不安」

こうした相談です。
この問題は、ここ数年で急速に増えてきました。

ハラスメントへの社会的関心が高まる中で、管理職の立場は以前より
難しくなっています。

部下に強く言えない。
指導の仕方が分からない。
距離の取り方が難しい。

その結果、
管理職が孤立してしまう
という状況が起きています。

そして、この問題を放置すると、職場のマネジメント自体が
機能しなくなる可能性があります。

では、なぜ上司は相談できなくなってしまうのでしょうか。

次の章では、
実は増えている「上司からのハラスメント相談」
について、もう少し具体的に見ていきたいと思います。

 

第3章:実は多い「上司からのハラスメント相談」

ハラスメント相談窓口というと、多くの人が次のように考えます。

「部下や被害者が相談する場所」

確かに、制度の出発点はそこにあります。

実際、法律上も企業はハラスメント相談体制を整備することが
求められています。

しかし、企業の現場で相談対応をしていると、ある特徴的な相談が
少なくないことに気づきます。

それは、
上司からの相談です。

しかも、その内容は決して珍しいものではありません。
例えば、実際の相談ではこのようなケースがあります。

・挨拶をしても部下が返してくれない
・指示を出しても動いてくれない
・注意をすると「パワハラですか?」と言われる
・陰で「パワハラ上司」と言われているらしい

こうした状況の中で、管理職がこう相談してきます。

「どう対応すればいいのでしょうか」
「何を言ってもハラスメントと言われそうで怖いんです」
「もう何も言わない方がいいのでしょうか」

これは決して特別なケースではありません。
むしろ最近は、このような相談は増えている印象があります。

企業研修の場でも、管理職の方からよく次のような声を聞きます。

「指導が難しくなった」
「注意するのが怖い」
「どこまで言っていいのか分からない」

この背景には、ハラスメントに対する社会の意識の変化があります。
近年、ハラスメントの問題は広く社会に知られるようになりました。
これはとても大切な変化です。

以前は見過ごされていたような言動が、問題として認識されるように
なったからです。

しかし一方で、その影響として、
管理職が過度に萎縮してしまう
という現象も起きています。

本来、管理職の役割には「指導」が含まれています。

仕事の進め方を教える。
問題があれば注意する。
改善を求める。

これらはマネジメントとして必要な行為です。
しかし、そのすべてが「ハラスメント」と受け取られるのではないかと
不安を感じる管理職も少なくありません。

その結果、次のような行動が起きることがあります。

・注意をしない
・評価を曖昧にする
・問題行動を見て見ぬふりをする
・部下との接触を減らす

これでは、組織として健全なマネジメントは成り立ちません。
そしてもう一つ重要なのは、こうした状況の中で、
管理職自身が孤立してしまう
という点です。

部下には相談しにくい。
同僚の管理職にも弱音を言いにくい。
人事に相談すると問題になるのではないかと不安になる。

結果として、誰にも相談できないまま悩み続ける管理職も
少なくありません。

ここで一つ考えてみていただきたいのです。
もし、管理職が誰にも相談できない職場だったらどうなるでしょうか。

おそらく、次の二つのどちらかの状態になります。

一つは、
過度に厳しい指導

もう一つは、
指導を完全に避ける

どちらも、組織にとって望ましい状態ではありません。
本来であれば、

「この伝え方でよかっただろうか」
「注意の仕方をどう変えればいいだろう」

といった段階で相談できれば、状況は大きく変わる可能性があります。
つまり、ハラスメント相談窓口は

トラブルが起きた後の場所
ではなく、

トラブルを防ぐ場所
でもあるのです。

そしてその役割を考えると、相談窓口は部下のためだけのものではありません。
管理職にとっても、非常に重要な存在になります。

実際、相談対応をしていると、管理職の方がこうおっしゃることがあります。

「もっと早く相談すればよかったです」
「誰かに聞いてほしかったんです」

この言葉は、決して珍しいものではありません。
むしろ、管理職の多くが同じような思いを抱えている可能性があります。

ハラスメント対策というと、「被害者を守る制度」として語られることが
多いものです。

それはもちろん重要です。
しかし、もう一つ忘れてはならない視点があります。

それは、
管理職を孤立させないこと
です。

では、そのためにはどのような相談体制が必要なのでしょうか。
多くの企業では、社内に相談窓口を設置しています。

しかし実際には、内部窓口だけでは十分に機能しないケースも
少なくありません。

次の章では、
なぜ内部相談窓口だけでは限界があるのか
について、企業の現場でよく見られる実態を踏まえながら
考えていきたいと思います。

 

第4章:なぜ上司は孤立するのか
―心理学から見る“指導できない管理職”

前章では、ハラスメント相談窓口には実は「上司からの相談」も
少なくない、というお話をしました。

「部下との関係に悩んでいる」
「どう指導すればいいのか分からない」
「パワハラと言われないか不安」

こうした相談は、決して珍しいものではありません。
では、なぜ管理職はこれほど悩みやすくなっているのでしょうか。

その背景には、いくつかの要因があります。
その一つが、指導とハラスメントの境界が分かりにくくなっていることです。

ハラスメントに対する社会的関心が高まる中で、多くの管理職は
「言い方」や「態度」にとても気を配るようになりました。

これは、決して悪いことではありません。
むしろ、以前よりも職場のコミュニケーションが丁寧になっている
企業も増えています。

しかし一方で、次のような戸惑いが生まれています。

「どこまで言えば指導で、どこからがハラスメントなのか」

これは、研修の場でも頻繁に出る質問です。

法律上、パワーハラスメントは一般的に次のような要素で判断されます。

・優越的な関係を背景としていること
・業務上必要かつ相当な範囲を超えていること
・労働者の就業環境が害されること

ただ、この説明を聞いても、多くの管理職はこう思います。
「実際の現場では判断が難しい」
確かにその通りです。

なぜなら、同じ言葉でも

・関係性
・状況
・頻度
・言い方

によって受け止め方が変わるからです。

例えば、
「この資料、もう一度やり直してくれる?」
という言葉でも、

冷静に伝えた場合と
怒った口調で何度も言った場合では
受け取り方は大きく変わります。

ここに、現代のマネジメントの難しさがあります。
さらに心理学の視点で見ると、もう一つ重要な要因があります。

それは、人は「ネガティブな出来事」を強く記憶するという特徴です。
心理学ではこれを「ネガティビティ・バイアス」と呼びます。

人は、良い出来事よりも悪い出来事を強く記憶する傾向があります。

例えば、管理職が部下に

10回丁寧に説明して
1回少し強い言い方をしてしまった場合、

部下の記憶に残りやすいのは、その「1回」です。

管理職としては
「普段は丁寧に接しているのに」
と思うかもしれません。

しかし、人の認知は必ずしも公平ではありません。
だからこそ、管理職は自分の言動にとても敏感になりやすいのです。

そして、もう一つ重要な要因があります。
それは、
管理職は「感情を表に出しにくい立場」である
ということです。

部下は、同僚や上司に愚痴を言うことができます。
しかし、管理職はそう簡単にはいきません。

「上司が弱音を吐いてはいけない」

そんな無意識のプレッシャーを感じている方も多いのではないでしょうか。
さらに最近は、管理職の役割自体が以前よりも複雑になっています。

・成果を出すこと
・部下を育成すること
・コンプライアンスを守ること
・心理的安全性を高めること

これらすべてを同時に求められるのが、現代の管理職です。
その結果、次のような状態に陥ることがあります。

「何を言っても間違いになるのではないか」
そう感じてしまうと、人はどうするでしょうか。

多くの場合、
行動を控える
ようになります。

つまり、

・指導を控える
・注意をしない
・関係を避ける

という状態です。
しかし、これは決して組織にとって望ましい状態ではありません。

部下にとっても、
「何も言ってくれない上司」
は決して助けになる存在ではないからです。

では、どうすればよいのでしょうか。
ここで重要なのは、
管理職が一人で抱え込まないこと
です。

「この言い方でよかっただろうか」
「もう少し違う伝え方があっただろうか」

そう感じたときに、誰かに相談できる環境があるかどうか。
それが、職場のマネジメントを大きく左右します。

ハラスメント相談窓口は、まさにそのための仕組みでもあります。
問題が起きてからではなく、
迷ったときに相談できる場所。

それが機能している企業では、管理職が孤立しにくくなります。
ただし、ここで一つ重要な課題があります。

それは、多くの企業で
相談窓口が「あるだけ」になってしまっている
という問題です。

制度として設置はされているものの、実際にはあまり使われていない。
そんな企業も少なくありません。

なぜ、このようなことが起きてしまうのでしょうか。

次の章では、
相談窓口は「被害者のためだけのものではない」
という視点から、相談窓口の本来の役割について考えていきたいと思います。

 

第5章:相談窓口は「被害者のため」だけではない

ハラスメント相談窓口という言葉を聞くと、多くの人は
次のようなイメージを持ちます。

「ハラスメントの被害を受けた人が相談する場所」

もちろん、それは間違いではありません。
実際、法律でも企業にはハラスメント相談体制の整備が求められています。

しかし、企業の現場を見ていると、相談窓口の役割は
それだけではないことが分かります。

むしろ、本来の役割はもう少し広いものです。
それは、
問題を未然に防ぐ“予防装置”
としての役割です。

多くの企業では、ハラスメント相談窓口が「トラブル対応の窓口」
として理解されています。

つまり、

・ハラスメントが起きた
・被害者が相談する
・調査をする
・是正措置をとる

という流れです。
確かに、この機能はとても重要です。

しかし、現場で相談対応をしていると感じるのは、
ハラスメントの多くは、突然起きるわけではない
ということです。

多くの場合、その前に必ず「違和感」があります。
例えば、次のような段階です。

「最近、言い方が少しきつくなっている」
「指導が続いていて、部下が萎縮している気がする」
「部下との関係がぎくしゃくしている」

この段階で誰かが相談できれば、状況は大きく変わります。

例えば、

「この伝え方ならどうでしょう」
「この場面では少し距離を取った方がいいかもしれません」

といったアドバイスだけで、問題が解消するケースも少なくありません。

つまり、
相談窓口は問題を“処理する場所”ではなく
問題を“大きくしない場所”
でもあるのです。

ここで思い出していただきたいのが、前章でお伝えした
「上司からの相談」です。

管理職は、次のような場面で迷うことがあります。

・注意の仕方が分からない
・部下との距離感が難しい
・パワハラと言われないか不安

こうした段階で相談できれば、トラブルになる前に調整することができます。
実際、相談対応をしていると、管理職からこんな言葉を聞くことがあります。

「この対応でよかったのか確認したかったんです」
「誰かに聞いてほしかったんです」

これは決して珍しいことではありません。
むしろ、真面目にマネジメントをしている管理職ほど、
このような悩みを抱えています。

そして、ここで重要なのは、
相談できる管理職がいる職場は、ハラスメントが起きにくい
という点です。

なぜなら、迷ったときに修正できるからです。
一方で、相談できない管理職がいる職場ではどうなるでしょうか。

迷いを抱えたまま、対応を続けることになります。

その結果、

・言い方が強くなる
・指導がエスカレートする
・関係が悪化する

といった形で問題が大きくなることがあります。

また逆に、

・指導を控える
・関係を避ける
・問題を放置する

という方向に進むこともあります。
どちらも、組織にとって望ましい状態ではありません。

つまり、ハラスメント相談窓口は
被害者のための制度
であると同時に、

管理職を支える制度
でもあるのです。

ところが実際の企業では、この視点が十分に共有されていないことがあります。
相談窓口は「トラブルの入り口」というイメージが強く、
「相談すると大ごとになるのではないか」
と感じてしまう社員も少なくありません。

その結果、

・相談をためらう
・小さな違和感を抱えたまま働く
・問題が深刻化する

という状況が生まれてしまいます。
本来であれば、
「少し気になることがある」
そんな段階で相談できることが理想です。

しかし、そのためには一つ大きな壁があります。

それが、
相談先が社内であること
です。

多くの企業では、人事部やコンプライアンス部門が相談窓口を担当しています。

もちろん、それ自体は重要な体制です。

しかし現実には、
「社内だからこそ相談しにくい」
という声も少なくありません。

では、なぜこのようなことが起きるのでしょうか。

次の章では、
内部相談窓口だけでは限界がある理由
について、企業の現場でよく見られる実態をもとに考えていきたいと思います。

 

第6章:内部相談窓口だけでは限界がある理由

多くの企業では、ハラスメント相談窓口を社内に設置しています。

例えば、

・人事部
・コンプライアンス部門
・総務部

などが相談窓口を担当するケースが一般的です。
制度としては、これで要件を満たしています。

企業としても「相談体制は整備している」と説明することができます。
しかし実際の現場では、次のような声を耳にすることがあります。

「相談窓口があるのは知っているけれど、正直使いにくい」
これは決して珍しい声ではありません。

では、なぜ社内窓口は使われにくいのでしょうか。
理由はいくつかありますが、特に多いのは次の三つです。

① 人事に相談する心理的ハードル

まず一つ目は、
人事部への相談に対する心理的ハードル
です。

多くの社員にとって、人事部は「会社側の部署」というイメージがあります。
もちろん、人事担当者は公平な対応を心がけているでしょう。

しかし相談する側からすると、

「会社に不利なことを言ってしまうのではないか」
「評価に影響するのではないか」

という不安を感じることがあります。
特に日本の企業では、同じ会社で長く働く文化があります。

そのため、
「相談したことが社内で知られてしまうのではないか」
という不安を持つ人も少なくありません。

② 相談が“調査案件”になる不安

二つ目の理由は、
相談がすぐ調査になるのではないか
という不安です。

社内窓口に相談すると、

・関係者へのヒアリング
・事実確認
・調査

といったプロセスに進むことがあります。
もちろん、必要な場合には重要な対応です。

しかし、相談する側の気持ちは必ずしもそこまで強いものとは限りません。

例えば、
「少し言い方がきつい気がする」
というレベルの違和感を感じている場合、

本当に望んでいるのは
「どう対応すればよいかのアドバイス」
かもしれません。

しかし、相談がすぐに正式な調査につながると感じると、
相談をためらってしまうことがあります。

③ 管理職はさらに相談しにくい

そして三つ目の理由が、
管理職ほど相談しにくい
という点です。

管理職は、組織の中で「指導する立場」にあります。

そのため、
「自分のマネジメントについて相談する」
ことに抵抗を感じる方も少なくありません。

例えば、
「部下との関係がうまくいっていない」
という相談を人事にする場合、

「自分のマネジメント能力を疑われるのではないか」
と感じることもあります。

その結果、管理職は問題を一人で抱え込んでしまうことがあります。

しかし、前章でもお伝えしたように、
管理職が孤立すると、職場のトラブルは大きくなりやすい
のです。

迷いながら対応を続けることで、

・言い方が強くなる
・関係が悪化する
・問題が表面化する

という流れになってしまうこともあります。

ここまで見てくると、あることに気づきます。

それは、
社内窓口が悪いわけではない
ということです。

社内窓口には社内窓口の役割があります。

例えば、
・組織の実態を把握する
・正式な調査を行う
・是正措置を取る
こうした機能は、企業にとって不可欠です。

ただし、それだけでは足りない場面もあります。

社員や管理職が、
「ちょっと聞いてほしい」
という段階で相談できる場所。

そのような存在が必要になるのです。

そこで近年、多くの企業が導入を検討しているのが
外部相談窓口
です。

社外の専門家が相談を受ける仕組みです。
外部窓口には、社内窓口にはない大きな特徴があります。

それは、
組織から一定の距離があること
です。

この距離があることで、社員や管理職は本音を話しやすくなります。
では、外部相談窓口は企業にどのような効果をもたらすのでしょうか。

次の章では、
外部相談窓口が職場にもたらす3つの効果
について、企業の実例を踏まえながら考えていきたいと思います。

 

第7章:外部相談窓口が職場にもたらす3つの効果

前章では、社内の相談窓口だけでは十分に機能しない場合がある理由
についてお話しました。

もちろん、社内窓口には重要な役割があります。
組織として正式に事実確認を行い、必要な対応を取るためには不可欠な存在です。

しかし、現場で相談対応をしていると、多くの社員や管理職が
こう感じていることが分かります。

「社内だからこそ、少し話しにくい」
この心理は決して不思議なものではありません。

同じ会社の中で働き、評価や人間関係がつながっている以上、
どうしても遠慮が生まれます。

だからこそ近年、多くの企業が導入を検討しているのが
外部相談窓口
です。

社外の専門家が相談を受ける仕組みです。
外部相談窓口には、社内窓口にはないいくつかの特徴があります。

ここでは、企業の現場で感じる代表的な効果を三つご紹介したいと思います。

① 本音が出やすい

まず一つ目は、
本音が出やすい
という点です。

社外の窓口であれば、相談者は次のような安心感を持ちやすくなります。

「会社の人ではない」
「評価に直接影響しない」
「人事にすぐ知られるわけではない」

その結果、社内では話しにくかった内容も話しやすくなります。

例えば、

「上司の言い方が少し怖い」
「チームの雰囲気が悪くなっている」
「指導の仕方に悩んでいる」

こうした“まだ問題になっていない段階”の相談が入ることがあります。
これは企業にとって、とても重要な情報です。

なぜなら、ハラスメントの多くはこの段階で調整できるからです。
小さな違和感のうちに対応できれば、大きなトラブルになる可能性は
ぐっと下がります。

② 組織のリスクを早期に把握できる

二つ目は、
組織のリスクを早い段階で把握できる
という効果です。

ハラスメント問題が深刻化すると、

・労働局への申告
・弁護士への相談
・SNSでの拡散

といった形で企業の外側に問題が出てしまうことがあります。
そうなると、企業としての対応はどうしても後手に回りやすくなります。

しかし外部相談窓口が機能している企業では、
問題が外に出る前に情報が入る
可能性が高くなります。

例えば、
「最近、チームの雰囲気が少し悪くなっている」
という相談があれば、企業としても早めに状況を確認することができます。

これは、組織のリスク管理という意味でも大きなメリットです。

③ 管理職の孤立を防ぐ

三つ目は、
管理職の孤立を防ぐ
という効果です。

前章でもお伝えしたように、管理職は悩みを一人で
抱え込みやすい立場にあります。

「部下との関係が難しい」
「どう注意すればいいのか分からない」
「パワハラと言われないか不安」

こうした悩みは、決して珍しいものではありません。
しかし社内では相談しにくいこともあります。

その点、外部窓口であれば
「ちょっと聞いてほしい」
という段階で相談することができます。

例えば、
「この言い方は強すぎたでしょうか」
「こういう場面ではどう伝えればいいでしょうか」
といった相談です。

この段階でアドバイスを受けられると、管理職の対応は大きく変わります。

結果として、
・指導の仕方が改善する
・部下との関係が安定する
・トラブルを未然に防ぐ
といった効果が期待できます。

つまり外部相談窓口は、
被害者を守る仕組み

であると同時に、
管理職を支える仕組み
でもあるのです。

ここまで見てくると、相談窓口の役割が少し違って
見えてくるのではないでしょうか。

相談窓口は
「問題が起きたときの制度」
ではなく、

問題を起こさないための制度
でもあります。

ただし、ここで一つ注意したいことがあります。

それは、
外部窓口を設置するだけでは十分ではない
という点です。

企業によっては、
「制度はあるが、ほとんど使われていない」
というケースもあります。

では、相談窓口が実際に機能する企業と、形だけになって
企業の違いはどこにあるのでしょうか。

次の章では、
ハラスメント相談窓口を“機能させる企業”と“形だけの企業”の違い
について考えていきたいと思います。

 

第8章:ハラスメント相談窓口を「機能させる企業」と「形だけの企業」の違い

ここまで、相談窓口の役割や外部相談窓口の効果について見てきました。
しかし、企業によっては次のような声を聞くことがあります。

「相談窓口は設置しているのですが、ほとんど相談が来ません」
制度としては整備されている。
規程にも明記されている。
社内ポータルにも掲載されている。

それでも相談がほとんど入らない企業は少なくありません。
では、このような企業は本当に問題が少ないのでしょうか。
必ずしもそうとは限りません。

実際には、
制度はあるが、使われていない
というケースも多く見られます。

では、相談窓口が機能する企業と、形だけになってしまう企業の違いは
どこにあるのでしょうか。

企業の現場を見ていると、いくつかの共通点があります。

① 相談窓口の存在が「知られているか」

まず基本的な点ですが、
社員が相談窓口の存在を知っているかどうか
これは非常に重要です。

意外に思われるかもしれませんが、
「相談窓口があることを知らない」
という社員は少なくありません。

例えば、

・入社時の説明で一度聞いたきり
・就業規則の中に書いてあるだけ
・社内ポータルに掲載されているが見たことがない

このような状態では、いざ困ったときに相談窓口を
思い出すことは難しいでしょう。

相談窓口が機能している企業では、

・研修で繰り返し説明している
・社内で定期的に案内している
・管理職が部下に伝えている

といった取り組みが行われています。

つまり、
制度を作るだけでなく、伝え続けている
という点が大きな違いです。

② 「相談しても大丈夫」という空気があるか

二つ目は、
相談しても大丈夫という空気があるか
です。

制度があっても、
「相談すると大ごとになるのではないか」
と感じてしまう職場では、相談は入りません。

例えば、

「相談したらすぐ調査になる」
「相談者が特定されるのではないか」
「職場で気まずくなるのではないか」

このような不安があると、人は相談を控えるようになります。

相談窓口が機能している企業では、
相談=トラブル
というイメージではなく、

相談=問題を早く解決するための行動
という認識が共有されています。

そのため、
「少し気になることがある」
という段階でも相談が入ることがあります。

この違いは、実はとても大きいのです。

③ 管理職が相談を否定しない

三つ目のポイントは、
管理職の姿勢
です。

職場の空気は、管理職の言動によって大きく左右されます。

例えば、次のような言葉を聞いたことはないでしょうか。

「そんなことで相談するの?」
「直接言えばいいじゃないか」
「大げさだよ」

このような言葉が出る職場では、相談は入りにくくなります。

社員は、
「相談すると面倒な人だと思われるのではないか」
と感じてしまうからです。

一方、相談窓口が機能している企業では、管理職が次のような姿勢を示しています。

「困ったことがあれば相談していい」
「早めに共有してほしい」
「一人で抱え込まなくていい」

この言葉があるだけで、相談のハードルは大きく下がります。

ここまで見てくると、相談窓口が機能する企業には共通点があることが分かります。

それは、
制度だけでなく、文化として根付いている
という点です。

つまり、

・制度がある
・社員が知っている
・相談しても大丈夫だと感じている
・管理職が否定しない

こうした条件がそろって初めて、相談窓口は機能し始めます。
ただし、ここで忘れてはいけないことがあります。

それは、
相談しやすい環境を作るには「相談先の選択肢」が必要
という点です。

社内窓口だけでは話しにくい。
上司にも相談しにくい。

そんなときに、
「社外にも相談できる」
という選択肢があると、相談のハードルは大きく下がります。

だからこそ近年、多くの企業が
外部相談窓口
を導入し始めています。

では、これからの企業はどのような相談体制を整えていく必要があるのでしょうか。

次の章では、
これからの企業に求められる相談体制
について考えていきたいと思います。

 

第9章:これからの企業に求められる相談体制

ここまで見てきたように、ハラスメント相談窓口は
単なる制度ではありません。

職場のコミュニケーションを支え、問題を早期に発見するための
重要な仕組みです。

しかし、企業を取り巻く環境は年々変化しています。
ハラスメントという言葉が社会に広く知られるようになり、
企業に求められる対応の水準も高くなりました。

以前は、
「問題が起きたら対応する」
という姿勢でもある程度は許されていたかもしれません。

しかし現在は、
問題を未然に防ぐ体制
が求められるようになっています。

これは単に法律の問題だけではありません。
企業の信頼や組織文化にも大きく関わる問題です。

例えば近年では、ハラスメントに関する情報がSNSなどを通じて
広がることもあります。

一つのトラブルが企業のブランドイメージに影響を与えることも珍しくありません。

そのため企業としては、
問題が外に出る前に把握できる体制
を整えることが重要になります。

ここで、もう一つ最近よく聞かれる言葉があります。

それが、
心理的安全性
です。

心理的安全性とは、簡単に言えば
「安心して意見や疑問を言える状態」
のことです。

ただし、この言葉は時々誤解されることもあります。

心理的安全性とは、
「何を言ってもいい」
「注意されない」
という状態ではありません。

むしろ本来の意味は、
問題や違和感を安心して共有できる環境
です。

その意味で、相談窓口は心理的安全性を支える重要な
仕組みの一つと言えます。

困ったことがあったときに、
「相談してもいい」
と思える環境があること。

これは職場の安心感につながります。
そしてもう一つ、近年の企業で増えている課題があります。

それが、
カスタマーハラスメント(カスハラ)
です。

顧客や取引先からの過度な要求や暴言など、従業員が
ストレスを感じる場面が増えています。

こうした状況では、社員が
「誰かに相談できる」
環境があることがとても重要になります。

例えば、
「顧客から強い言葉を言われた」
「クレーム対応で精神的に負担を感じている」
といった場合でも、相談できる場所があれば、
早めにサポートすることができます。

つまり相談窓口は、

・社内ハラスメント
・管理職のマネジメント
・カスタマーハラスメント

といったさまざまな問題に対応する
組織の安全装置
とも言える存在です。

そして、これからの企業に求められるのは、
相談体制を「形式」ではなく「機能」として整えること
です。

例えば、

・社内相談窓口
・外部相談窓口
・管理職への研修

これらを組み合わせることで、より実効性のある体制を作ることができます。

重要なのは、
相談できる場所があること

そして、
相談しても大丈夫だと社員が感じていること
です。

制度を整えることはスタートに過ぎません。

その制度が実際に使われ、組織を支える仕組みになっているかどうか。
そこが、これからの企業のハラスメント対策を大きく左右します。

では最後に、この記事のテーマに戻りたいと思います。

ハラスメント相談が増える職場と、増えない職場。
その違いはどこにあるのでしょうか。

次の章では、これまでの内容を整理しながら、
ハラスメント相談が増える職場、減る職場の決定的な差
についてまとめていきたいと思います。

 

第10章:相談できる職場が、結果的にハラスメントを減らす

ここまで、ハラスメント相談窓口についていくつかの視点から
考えてきました。

最初にお伝えしたのは、
相談件数だけで職場の良し悪しは判断できない
ということでした。

むしろ、
相談が増えている職場の方が健全な場合もある。
この点は、企業の現場を見ていると強く感じることです。

なぜなら、相談が入るということは
「この会社は話を聞いてくれる」
という信頼が生まれている可能性があるからです。

一方で、相談がほとんど入らない企業もあります。
もちろん、本当に問題が少ない場合もあるでしょう。

しかし実際には、
問題が見えていないだけ
というケースも少なくありません。

小さな違和感が共有されないまま積み重なり、
ある日突然、

・退職
・労働局への申告
・訴訟

といった形で問題が表面化することもあります。

企業としては
「そんな問題があったとは知らなかった」
という状況になります。

しかし、その前には必ずサインがあります。

そのサインを受け止める仕組みが、
相談窓口
です。

そしてこの記事の中で、もう一つお伝えしたかったことがあります。

それは、
相談窓口は部下のためだけの制度ではない
ということです。

実際の相談対応では、「部下からの相談」と同じくらい、
管理職からの相談もあります。

「どう指導すればいいのか分からない」
「部下との関係が難しい」
「パワハラと言われないか不安」

こうした悩みは、多くの管理職が抱えています。
しかし、管理職は弱音を吐きにくい立場でもあります。

その結果、一人で抱え込んでしまうことがあります。
そして、管理職が孤立すると、
職場のマネジメントは難しくなります。

・注意をしない
・指導を避ける
・関係を遠ざける

こうした状態は、決して健全とは言えません。

だからこそ、相談窓口は
被害者を守る仕組み
であると同時に、

管理職を支える仕組み
でもあるのです。

また、多くの企業では社内相談窓口が設置されています。
これはとても重要な体制です。

しかし実際には、
「社内だからこそ相談しにくい」
という声があるのも事実です。

評価や人間関係を気にして、本音を話しにくいこともあります。
そのため最近では、
外部相談窓口
を併設する企業も増えてきました。

社外の専門家が相談を受けることで、
・本音が出やすくなる
・小さな違和感が共有される
・問題を早く把握できる
といった効果が期待できます。

そして結果として、
大きなトラブルを防ぐ
ことにつながるのです。

ハラスメント対策というと、
「問題を起こさないこと」
に意識が向きがちです。

もちろん、それは重要です。
しかし現実の職場では、人と人が関わる以上、誤解や摩擦が完全に
なくなることはありません。

だからこそ重要なのは、
問題を早く見つけること
です。

そのための仕組みが、
相談窓口です。

そして最後に、もう一つだけ問いかけをさせてください。

もしあなたの職場で、

・部下が悩んでいたとき
・管理職が指導に迷ったとき
・小さな違和感を感じたとき

誰に相談できるでしょうか。

その答えがすぐに浮かぶ職場は、きっと健全な組織です。

もし少し迷うようであれば、
それは相談体制を見直す良いタイミングかもしれません。

相談窓口は、
問題が起きたときの制度ではありません。

職場を守る安全装置
です。

そして、その安全装置が機能している職場ほど、
結果としてハラスメントは起きにくくなる。

私は、多くの企業の現場を見てきて、そう感じています。

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